最大の出来事
「あ!」
「育ちゃん、ちゃんと周囲を見ないと・・・・・・」
「ごめんなさい・・・・・・」

 無意識にカニさん歩きをしながら、左から右へ移動していた。

「それと空夜はグレープフルーツのタルトが欲しいみたいだよ」

 さっき、育実が呟いていたことはしっかりと璃穏の耳に届いていた。

「そっか・・・・・・」
「育ちゃんは何にする?」
「私は・・・・・・」

 まだ迷い中の育実は選ぶことに集中しようとしたとき、さっきのことが気になった。

「ちょっと待って」

 ゆっくり選べばいいことを璃穏が言うと、育実はそうじゃないことを言う。

「どうして空夜が食べたがっているものを知っているの?」
「それはね・・・・・・」

 璃穏がポケットから取り出したものは携帯電話。それを操作して育実に読ませたのは空夜が璃穏に送ったメール。そこにグレープフルーツのタルトを食べたいことを書かれていた。

「俺はもう決めたよ」
「何を買うの?」
「洋梨のタルトにしようかな」

 悩んだ末に育実が選んだものは木の実のタルト。それらの金を璃穏に払ってもらい、タルトは育実が持つことにした。
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