最大の出来事
「ふふっ」

 突然笑い出した璃穏を見て、育実は怪訝そうな眼差しを向ける。

「な、何?」
「小さい子が一生懸命持っているから」

 育実の姿が可愛らしく、思わず笑みが零れる。

「だってせっかくのタルトを落としたら大変だから」
「それくらい俺が持つよ?」

 タルトを持とうとする璃穏の手を一瞥してから断る。

「大丈夫。これくらいやらせて」
「育ちゃん!前!!」
「きゃっ!」

 電柱に激突しかけた育実を璃穏は力強く後ろに引っ張った。

「怪我をしていない?」
「うん・・・・・・」
「ちゃんと前を見なきゃ駄目だよ?」
「ありがとう、気をつける」

 家に帰ったときに箱を開けると、列が乱れ、璃穏のタルトが少し崩れていた。

「また転んだのか?」
「違うよ・・・・・・」

 空夜が育実の膝や腕などを見る。電柱にぶつかりそうになったことを話すと、空夜は納得した。

「璃穏兄ちゃんがいてくれて良かった」
「ごめんね、璃穏君。壊しちゃって・・・・・・」
「大丈夫だよ。食べよう」
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