君がいないと落ち着かない

林はすぐに目を逸らして前を見た。鹿の間を通り過ぎた先には鶴の間と川の間しか部屋はない。手前では、襖を開けて中へ入っていくクラスメイトの姿が見えた。
4枚ある襖は外側の2枚と内側の2枚がずれて、前に出ている襖は開かれて左右の外側の襖と重なっている。忍の手前側にある襖に描かれた鶴の絵を、通り過ぎにさっと撫でるように見てから中へ入った。

2列に並べられた横に長いテーブルに5つずつ椅子が用意されていた。出席番号順に横に並んで座った。先生の話が始まり委員や係を決めていった。林と河崎が社会係になり、忍とれー子で書記という係になった。
1時間ぐらいで終わり、礼をして解散になった。鶴の間を出るとまた生徒達の波にのまれた。階段の下辺りに林達が待っていてくれ、合流して階段を上った。下を向いて足元を見ながら上る忍は前から来る人が見えなくなる。唯一、目の前にいる人の踵が見えている間はぶつかる心配がない。


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