隣の席の西城くん


「ねぇ西城、俺ってそんなにわかりやすい?」


騒がしい教室内。窓際の一角。
寝ている衛藤さんの隣り、西城に向けて言葉を投げる。
隠す必要もなくなった優等生に、息ができるような錯覚を起こして戸惑った。
別に、どこでだって息はできるじゃないか。


「みんな気付いてないし、わかりにくいんじゃないの」

「意味わかんねぇ、じゃあなんで君らはわかったの」


ゲームをする手を無理やり止めさせた。
これも、周りから見たら、やりすぎなゲームを止める委員長に見えている。


「・・・なんとなく」

「なんとなく?」

「笑顔が嘘くさい」


そ、んなことで・・・バレるもん?


「一回疑っちゃえば、ボロ探しって案外簡単なんだよ」


ゲームを操る手が、また忙しく動き始める。


「例えば、委員長としての仕事を頼まれる時少しだけ声のトーンが低いとか」

「・・・そんなの、たまたまかもしれないだろ」

「毎回」


・・・くそっ、今度から気を付けよう。
俺の声に反応しているのかしていないのか、ボタンを叩く指は止まらない。
脳と口と指が全く別の生き物みたいだ。



「あと、衛藤さんが気付いたのは、似合わないからだよ」



隣で机に突っ伏して眠っているその子を一瞥してから、西城に目を戻す。
・・・なんでそんなことが分かるんだよ。
ゲーム画面に、「YOU WINNER!!」と表示されたところで、西城はやっとこちらを向いた。



「・・・ふ、似合わな」


あ、ムカつく。


この二人は、俺に優等生は似合わない、と言いたいらしい。
・・・高野さんもそう思って俺を嫌っているのかと思っていたけれど、あれは例外だ。衛藤さんにしか心を開いていない。
むしろ、衛藤さんに近付く男は無条件で嫌いになるようだ。


「西城は、いろんなこと知ってるって聞いたんだけど」

「・・・」

「衛藤さんは、どういう男がタイプなんだろうね。西城、知ってる?」

「知ってても教えない」


あ、知ってるんだ。
ふぅん・・・知ってたとしても、衛藤さんに関してこいつには頼らない。
絶対に頼らない。


「西城くん、ゲームしすぎなようにね」


怒られるのは、俺なんだからな。


「・・・知ってる」


言いながら笑ったそいつに、怒りよりも「あ、西城って笑うんだ」なんて驚いてしまった。

・・・やっぱりムカつく。
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