隣の席の西城くん
北島
北島ですが。
最近気になるやつがいます。
恋とか愛とかではないです。
相手は男です。
いやいやいや、今の時代男が男に恋するなんてことがあるから、あり得ない話ではないけれど。そんなんじゃなく、ただただ興味が出ました。
「さーいーじょーうーくーん!あーそびーましょ!!」
「・・・近い」
俺の顔を押して、距離をとろうとするそいつ。
西城龍生、最近気になるやつ。シャーペンを届けに来た衛藤さんが、西城から俺の持ち物だと聞いたらしい。
それが・・・俺には信じられなかった!
だって、あの西城だぜ?ずっと下を向いているイメージしかないし!暗い印象以外になにもなかったんだ!それが女と喋ることができるなんて!!
と、そこまで思ってしまったワケだ。
そして今、いざ喋ってみれば、想像とは何かが違った。
「西城ってそういう喋り方なの?!」
「え」
「もっとこう、・・・ぼぼ僕西城ですぅー、や、やめてくださいよぉ・・・って感じかと」
「・・・初対面でこんなにバカにされたの、初めてだよ」
案外ハキハキ喋るんだな!そこまでハキハキじゃないけど!と言ってみれば、ため息ついでにゲームへと目を戻してしまった。ずっとゲームばかりに目を向けて、まったく目が合わない奴だ。
無理やり視界に入ってやろうと屈んだ時、背中の方から声が聞こえた。
「おー、あーと、なんだっけ。シャーペンの人」
おぉ、有名なマイペースちゃんじゃん。
「衛藤さんだよな!」
「よく覚えてたね。すごい」
「おぉ!もっと褒めて!!」
「すごーいシャーペンの人すごいー」
なかなかに棒ではあるけれど、褒められている気分になるから不思議だな。でも、たぶん衛藤さん俺の名前覚えてないだろこれ。
「近いよ」
至近距離でジィっと見つめても逃げない衛藤さんに、西城が俺を引っ張って引き剥がす。
「・・・・・・はぁん、なるほど」
「・・・何」
めんどくさそうにこちらへ言葉を投げてくるそいつに、俺はニヤニヤした顔を抑えられないまま、衛藤さんの肩に手を回した。
「衛藤さーん・・・西城、お前のこと好きなんじゃねぇのぉ?」
反応を見てやろうと思ったんだ。
ずっと下に顔を向けているそいつが、赤い顔をして慌ててこっちを見る想像をして。あるいは、衛藤さんの方が戸惑ったり焦ったりするんじゃないかと思って。
・・・が、返ってきた二人の反応は全く違うものだった。
「好きって言った」
「好きって言われた」
「・・・・・・・・・へっ!?」
思考がいきなりポロッと無くなった気分だ。しかも・・・え、待て待て待て、なに?西城、衛藤さんに告ったの?
西城は混乱している俺から、衛藤さんを引っ張って自分の後ろへ隠した。
っ・・・どういうことだよ!!