隣の席の西城くん
私事ですが
西城
西城龍生ですが。
別に、特別な人間なんかではなく。
普通の男子高校生です。本当に。
ゲームが好き、勉強はそこそこ。
勉強そっちのけで攻略に励んでいましたが、好きな子に「ほどほどに」と言われたのでほどほどにしています。
でも、まだ「やりすぎ」といわれてしまいます。
・・・そう言ってくる割に、僕がやっているゲームを少し興味を持って覗いてくるところが可愛いです。
キャラクターの絵が下手くそなのに、風景や人物の絵はとても上手いです。変なの。
でも、僕と違って、よく見ているからだと思います。
何故なら、その人の絵はとても優しいからです。
「西城くん、またゲームしてるの。あ、今日はアルマジロやってるの」
「・・・猫だよ」
あ、好きだ。
唐突だけど、いつからだったか、ふとそう思ってしまって気付いた。
やっぱりいいな、この人の空気は、いい。
いつの間にかパーソナルスペースに入り込んでくるものだから、自分がこんなに人を受け入れられることに毎回驚いてしまう。
でも、この人だからこそ受け入れられるのだと分かった。
「弥生」
「ん?」
「好き」
「・・・はい」
意外と不意打ちに弱い。
顔には出さないけれど、声が少し震える感じ。
とても心地のいい温度。
隣同士になって「普通」ではないことを知った。
いろんなことに興味がないかと思えばそうではなく、かと言って飛び抜けて何かに没頭するようなこともなく。
目立つかといえばそんなことはないのに、何故か人が集まる。
すべてを受け入れてくれる、許される気になってしまう、人の内面をたやすく覗いてしまう。
そして嫌わないでくれる。素敵な人。
「あ、犬きた」
「・・・猫ね」
この子の近くは、居心地が良すぎるんだ。