聖なる夜に永遠の約束を【クリスマス企画】
聖なる夜に永遠の約束

実花はやっぱり、俺の事をよく分かっていた。

言う通り、俺は実花を忘れるのが怖い。
自分のせいで実花の命は奪われたのだと思うと、決して忘れてはいけないのだと言い聞かせていたのだ。

だけど、気持ちとは反対に、実花を忘れている時間が増えてきた。

いつの間にか、隣にいる紗雪を想う時間が増えてきたのだった。

その俺の気持ちさえも、実花はお見通しなのか、俯いた俺をそっと抱きしめてくれた。

「いいんだよ、柊。もっと自分の気持ちに素直になって。私は、柊にこんなにまで愛されていたんだと分かっただけで、もう心残りはないの」

優しい言葉に、涙が溢れる。

「実花の側にいたいと思った気持ちも嘘じゃない。だけど…」

「うん。分かってる。紗雪ちゃんに、辛い思いをさせちゃダメ。柊も、もうクリスマスに私に会いに来ちゃダメだよ?」

そう言ってそっと離れた実花は、俺を光りのある方へ振り向かせた。
そして、優しく背中を押したのだった。

「バイバイ、柊。柊が幸せなら、私は安心してこの世界にいられる。ここはこんな暗闇だけど、私がいる場所はとても明るくて綺麗な場所なのよ」

少しだけ振り向いた俺に、実花は満面の笑みを浮かべた。

「だから柊、もう寂しいなんて思わないで。私は寂しくなんかないから」

俺が実花に笑顔を向けられるのは、きっとこれが最後だ。
それならば、もう悲しんでいてはいけない。

俺の笑顔も、実花に覚えてもらわないと。
実花に負けないくらいの笑顔を浮かべて、最後に伝えた。

「実花、俺はお前の笑顔を絶対に忘れないよ」

「うん!柊も、ずっと笑っていて」

その言葉を聞いて、光りの方向へ走った。
早く紗雪の元へ帰らなければ。

すると、背後から実花が大きな声で言ったのだった。

「柊~!マフラーは私が持って行くからね!」

「ええっ!?」

驚きで振り向いたところで、勢いよくどこかへ落ちた。

そして目覚めた時には、病院のベッドの上だったのだ。

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