聖なる夜に永遠の約束を【クリスマス企画】
「柊!気が付いたの?良かった…」
実花と話していた時よりも、頭がボーッとする。
まぶたもハッキリと開けられない。
だけど、そんなウツロとする中でも、涙を流して安心する紗雪の姿だけは間違いなく分かった。
「紗雪…、俺…」
体中が痛い。
首を動かそうにも動けず、目だけ動かすと、安堵して笑顔を浮かべる両親の姿も見えた。
医者や看護士たちが、俺の血圧やらを診て、両親に何かを伝えている。
すると、父さんが深く頷いて、俺に言ったのだった。
「じゃあ、父さんと母さんは席を外すな」
と。
それが、紗雪と二人きりにしてくれるという意味だと、すぐに分かったのは、俺が贈るはずだった指輪を、紗雪がしっかりと握り締めているのが見えたからだ。
「紗雪、その指輪、何で持ってるんだ?」
かすれる声で聞くと、涙を拭った紗雪が答えてくれた。
「事故の時、箱が潰れたみたいで、警察の人が中を確認したの。そうしたら、これが…」
そうか。
じゃあ、車の下敷きにでもなったのかもしれない。
それなのに指輪が無事だったのは、実花が守ってくれたのだろうか。
「その指輪、紗雪に贈るものなんだ」
「うん。すぐに分かったよ。だって内側に刻印が…」
やっぱり、刻印をしてもらって正解だったな。
『S LOVES TO S』
紗雪への愛を刻んでもらった時、俺たちはイニシャルが一緒だと気が付いた。
そんな些細な事も嬉しいと感じて、俺は本当に紗雪を愛してると思ったのだ。
「クリスマスイヴに、絶対に紗雪にプロポーズしたかったんだ」
俺にとっては時が止まっていたクリスマスイヴに、新しい人生を進めたかった。
「ありがとう、柊…。まだクリスマスイヴは終わってないよ」
「そうなのか?良かった…。じゃあ、紗雪よく聞けよ。一回しか言わないから」
「うん」
「紗雪、愛してる。結婚してください」
外では一面の銀世界が広がっている事が、窓から見て分かる。
ホワイトクリスマスの夜、病院という場所が不本意だが、俺は紗雪にプロポーズをした。