闇ノ花

好きだから



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真夜中になり、私は忍装束を着て、京の町を歩いていた。


真っ暗で何も見えない。


だけど忘れてはならないのは、今が戦中であるということ。


夜とはいえ、もしも見付かって、敵だと間違えられたら何をされるか分からない。


そして、しばらく歩いていると、見覚えのある屯所が見えてきた。





「……」





だけど──。


私がいた時までの面影は、なくなっていた。


もうこの建物は、戦のせいかぼろぼろになっていたのだ。


それから、新撰組の旗も。


みんな、戦のせいで煤で真っ黒。



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