闇ノ花




顔を上げると、女だ、という声が上がった。





「小松は江戸の出であり、俺の親戚でもある。忍術が優れているから、監察方にした。また、俺の小姓にもなった」





土方さんがそう言うと、再びざわついた。


“別嬪さんじゃねぇか”という声まで聞こえ、少しその方向を睨む。


からかわないでほしい。


すると、土方さんにもその言葉が聞こえたのか、さらに声の大きさを上げた。





「女人禁制ではあるが、訳あってこいつを入隊させた。女だろうが隊士である事に変わりはない」





その声の大きさに、みんな静まる。





「こいつもお前らも同じ隊士だ。気を抜いてこの女に手を出そうなんて馬鹿げた事考えんじゃねぇぞ。そんな奴の処罰は、切腹じゃ済まさねぇからな」





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