【短編】……っぽい。
なんだか急に課長のことが可愛く思えてきて、思わず笑ってしまうと、腑に落ちない様子の課長は、わずかに語気を強めた。
けれど、もう鬼課長だとも怖いとも思えなくなったあたしは、それをまた、笑ってかわす。
「ところで課長は、いつからあたしのことを好きだったんです? 全然気がつかなかったんですけど、聞いたら教えて頂けますか?」
「そうですね、僕のことを好きだと言ってくれたら、教えてあげてもいいですよ」
「自分は“好きっぽい”だったくせに?」
「大崎さん、それは……」
あ、課長が困っている。
おそらくこの顔は、鬼課長と名高い真山課長があたしにしか見せない顔なのだ。
ああもう、可愛い。
終業後のオフィスで繰り広げられていた、かなり緩いクリスマス戦線は、とりあえず課長に軍配が上がった、という結果に終わった。
けれど、あたしも負けてはいない。
課長にもこんな顔があったのだ、と一度味をしめてしまったら、いくら課長が嫌がろうと、もうその顔が見たくて見たくてたまらなくなり、ついつい意地悪をしてしまいたくなる。
ん?
これって、あたしも課長が好き……っぽい?