【短編】……っぽい。
 
なんだか急に課長のことが可愛く思えてきて、思わず笑ってしまうと、腑に落ちない様子の課長は、わずかに語気を強めた。

けれど、もう鬼課長だとも怖いとも思えなくなったあたしは、それをまた、笑ってかわす。


「ところで課長は、いつからあたしのことを好きだったんです? 全然気がつかなかったんですけど、聞いたら教えて頂けますか?」

「そうですね、僕のことを好きだと言ってくれたら、教えてあげてもいいですよ」

「自分は“好きっぽい”だったくせに?」

「大崎さん、それは……」


あ、課長が困っている。

おそらくこの顔は、鬼課長と名高い真山課長があたしにしか見せない顔なのだ。

ああもう、可愛い。


終業後のオフィスで繰り広げられていた、かなり緩いクリスマス戦線は、とりあえず課長に軍配が上がった、という結果に終わった。

けれど、あたしも負けてはいない。

課長にもこんな顔があったのだ、と一度味をしめてしまったら、いくら課長が嫌がろうと、もうその顔が見たくて見たくてたまらなくなり、ついつい意地悪をしてしまいたくなる。


ん?

これって、あたしも課長が好き……っぽい?
 
< 19 / 20 >

この作品をシェア

pagetop