【短編】……っぽい。
あたしが今まで、空気が読めないと思ってきた課長の言動の数々には、こういう裏があったんだ、と今さらながら気づいたのだ。
『完全に捨てていますね、自分の女を』は、僕は拾いますけどね、という意味で言ったことだったのかもしれなかったり。
また『さぞ冬は寒いでしょうね』や『確か26歳でしたよね? そうなると、もうけっこう後がない感じですよね 』は、僕がぬくぬくしてあげますから安心してください、という意味で言ってくれたことだったのかもしれなかったり。
『頑張りますね』は、おそらく、もっとあたしにアプローチする、という意味で、自分に対して言ったのではないかと思う。
「コーヒーどうぞ」
「あ、すみません、恐縮です」
ほわほわと湯気の立つマグカップを両手に持って戻ってきた課長から、片方を受け取る。
とにもかくにも、ゆるりゆるりと丸め込まれ、のらりくらりと始まりつつある課長との関係には、まだ答えを出さないほうがよさそうだ。
なんせ、っぽい、なのだから。
とはいえ、さっきの『好き……っぽい』は、課長の照れ隠しなのだと分かるのだけれど。
「ふふ」
「何を笑っているんですか、大崎さん」
「いえ、なんでも」