一生もんの道化師
ロングと違って結ったり巻いたりする必要はないし、手ぐしでパパッと解かせばすんなり形が整うのでとっても楽チン。


流行り廃りのない髪型だし、社会人として許される範囲内でカラーリングをし、顔面にも必要最低限度の化粧を施しているので、一応今時の若い女性と認識してもらえる外見にはなっているハズ。


ずぼらでぐうたらであらゆる面で手抜きしまくりではあるけれど、それを周りに悟られたくないという羞恥心と乙女心は一応持ち合わせている。


その時ふと、鏡に映る自分の背後の光景に意識が向き、と同時に昨日ここで耳にした会話がふいに甦った。


「そんな訳で明日、１６時に先方と打ち合わせして来ます」


請求書の作成が一段落し、ちょっと息抜きに午後のお茶をしようと喫茶コーナーまで歩を進めると、我が営業二課の課長と高藤さんが長椅子に腰かけ、コーヒー片手に語らっている所だった。


ウチの社は固定の休憩時間というのはなくて、午前と午後それぞれ１５分間、自分の好きなタイミングで休息をとって良い決まりになっている。


お茶を飲んだりおやつを食べたり、煙草を吸いたい人は喫煙室に行ったり。
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