雪だるマフラー


「クリスマスプレゼント何が良い?」


自分で下着をつけながら言われた言葉。せめて最後まで服を着てから言って欲しい。
そもそもプレゼントって普通サプライズが喜ばれるものなんじゃないの?と、言いたい所だけどそんな夢見る年齢はとっくに越えている。ましてや開封した避妊の袋がベッドの下で転がっている現実。


「……別に、思い浮かばない。」


欲しい物を聞かれた数秒間でこの人の予算を想像してしまい、負担をかけるくらいなら貰わない方が良いと思った私はやはり、夢見る年齢ではなくなったと思う。


彼がエンポリオの腕時計をした右手で煙草に火をつける。セブンスターが嗜好品で何年も変えてないと言っていた。

一途なのね、ある意味ね。


「逆に私がプレゼントしてあげようか?その時計も傷だらけじゃない。」

「これは外せない約束だから。」


悪気があるわけじゃない、だけど万が一ね?その発した言葉で私が傷ついていたらどうするの?
傷ついていた所で対処は目に見えてるけどね。


私の前だけ時計を外すこと、その行為で喜ぶくらいならとっくに実行しているだろう。


「考えといてよ。」


煙草の香りがするキスをされる。このキスをしてからもう少しで一年。
薬指に指輪をはめているこの彼と一年が経とうとしていた。



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