雪だるマフラー
だる

「ふふ、彼氏とお幸せに~だって。」

「最近舞も生意気で手に追えないよ。」

「貴方にそっくりよ。貴方を見ている錯覚に陥るもの。それに…「なぁ。」


話している最中、会話を無理矢理被せられる。



「娘の話は止めてくれないか?気分が萎えるんだ。」


そう言って煙草を吸わない私の部屋でセブンスターに火をつける。
貴方のせいで白い壁に煙草のヤニが染み付いたじゃない。

彼は学生婚という名の出来ちゃった結婚。年の割りには大きな娘に年の割りには貫禄のあるオーラ、そして年の割りには恋人に対する溢れそうな激しい愛情表現。

好き?って抱かれる度に聞かれて、愛してると抱かれる度に囁かれる。
もっと一緒にいたいと言うと、俺もだよと優しい笑顔を見せてくれる。

左手の薬指の指輪も、奥さんが結婚する前にくれたクリスマスプレゼントの時計も。


見ないフリをすれば全て幸せなの。
欲しい物、何もないよ。貴方さえ側にいれば、全て幸せなの。

ありきたりで幻想的な言葉でさえも、鵜呑みにしてしまうんだ。


「もっと早くに出会っていたら……。」


どうしてもというならばクリスマスプレゼントはタイムマシンが欲しいよ。



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