そしてまた、キミに。
「…できた。
はい、先生」
坂口さんが書き終えた日誌を手渡す。
「ん。おつかれ」
「先生、さようならー」
笑顔で手を振る松田さんと、
小さく手を振る坂口さん。
こういう、ふとした時に
すごく幸せを感じる。
2人の足音が小さくなってきたとき、
俺は言い忘れたことを思い出して
急いで教室の外に出た。
「松田さん!坂口さん!」
2人が足を止めて振り返る。
「クラスが替わっても
俺はずっと2人の担任だから」
俺の存在が少しでも力になれているなら、俺はこれからも2人を見守っていると、
担任じゃなくなっても
関係は今までと変わらないと、
どうしても今伝えておきたかった。
…いや、
そんなのは教師としての建前で、
単に俺がいるってことを忘れて欲しくなかっただけなのかもしれない。