けぶる緑の奥に隠した、私の愛する永遠の少年。(短編)
マキは自分の頬に触れているマリの指を、そっと両手で包み込み、まっすぐ自分の視線の先にくるように、彼女の滑らかな手を、テーブルの上に移動させた。
第三者からみれば、なかの良い姉妹が、ただ手をつないでいるようにみえる。
マリ姉の爪には、ミルクティーみたいな上品なフレンチネイル。
マキはゆっくりとその爪先を弄ぶ。
注意深く観察する。
ほんの少し爪先にラメが光る。
「マリ姉、私ね。すこし…鬱なのかもしれない。
マリッジブルーなのかな?」
マキの、どこか焦点の会わない瞳。
「ずっと…話したい事があったの。
マリ姉を嫌な気持ちにさせるかもしれないけど…」
赤らめた頬で、上目遣いに私を気にする妹。
すがるような瞳で。
かわいい妹。
だけど、いつも言葉尻に彼女のいやらしさを感じるのは何故だろう?
偽善は嫌い。
だからその時も私は、どこか冷めていたように思う。
「森の奥の…沼のほとりの…あの少年を覚えている?」

カラン…コロン…
喫茶店の扉が開いた。
いらっしゃいませ、と店員の声。


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