君と歩いていく道
そうして、世界は暗転した。


あまりの悔しさにマスコミを避け、逃げ込んだ先で初めての発作。
心配になった恋人は彼女を追いかけて、落ち着いたのを見計らってマンションに連れ帰った。


真崎は荒れた。


発作が起きれば腕を切りつけ、治りきらないうちにまた傷が増えた。
紺野が抱きとめていなければマンションから飛び降りていたかもしれないぐらいに、追い詰められていた。

根気強く付き合った紺野の精神力はすごいものだ。
冷静になればそのことがわかるのだが、真崎が冷静でいられる時間は短かった。


楽団からの出席要請に答えることもできず、どんどんピアノの鍵盤に触れることができなくなっていく。


紺野がいなければ、とっくに死んでいただろう。
手首を切ろうとした瞬間、真崎の脳裏に紺野のことが浮かび、力が鈍った。


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