君と歩いていく道
だが、紺野は知られてもいいと思っている。
自分たちだって、もういい大人なのだから。


「お前に、近くで俺のテニスを見てほしい。」

「じゃあ、はやく、たいいんしなきゃだ。」


真崎の穏やかな声は本当に久しぶりに聞くと思う。
たまらなく幸せな気分になって、二人は唇を重ねた。


不安材料は残る。

彼女の発作はいつ起こるか分からないからだ。
それでも紺野は、真崎が辛い時、苦しんでいる時に傍にいられないもどかしさは、もう充分だった。
だったら連れて行く。
そう決めたら、紺野は一直線だった。

真崎自身もとても不安だったが、今は考えないようにしたかった。紺野の言葉が純粋に嬉しかったからだ。
早く退院したいと、気持ちは焦る。

今まで紺野がいようが、ピアノのことが耳に入れば発作的に腕を切りつけていた。
それが治らなければ、そばにいることは出来ない。
まずは退院して、そして、自分のピアノを取り戻さなければ。


わかっているのに、道のりは果てしなく長い。


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