クリスマス・イブは金曜日




メールは愛川からで、営業先のC駅で信号トラブルによる遅延に巻き込まれたらしい。

“ごめん! 遅れる”と書いてあった。


C駅からS駅に来るには、途中でM駅で乗り換える必要がある。

急行か何かで上手く乗り継げれば速いが、各駅に乗ってしまえば時間がかかるだろう。

何てこった。店の閉店時間だって決まってるのに…。
ってか、もう単純に、愛川が心配。



虚しく溜め息を吐いた俺の横を、一組の若いカップルが通り過ぎた。

男の方は茶髪に染めてて、だけど何か真面目そうな感じ。
恐らく大学生くらいだろう。

外国人の血が混じってそうな女の方は、何処のだか分かんないけど、高校のらしき制服を着ていた。


そのカップルは駅前広場の横のスクランブル交差点で信号待ちをしている間、女の方が背伸びして、男の唇にキスをしていた。

うわ! 羨ましい!
俺なんて、告白すら出来なくて困ってるっていうのに…。

……じゃなくて。
公衆の面前で何やってんだよ、あのカップル。

今日がクリスマスイブだとしても。




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