夏色の約束。~きみと生きた日々~


そしたらあおちゃんのお母さんはなつから体を離して、なつの顔を見てやんわり微笑む。


「私も、菜摘ちゃんと同じ気持ちよ。碧もきっと、最後の最後まで菜摘ちゃんと一緒にいることができて、よかったと思ってる。だってあの子、小さな頃からずっと菜摘ちゃんだけを見てたから」

「あお、ちゃ……っ」

「大好きな息子の、一番の願いを叶えてあげられたんだもん。親として、これほど幸せなことはないわ」


そう言って、静かに海を見つめるあおちゃんのお母さんの眼差しはとても優しくて。


母親の強さというものを、なつはこの日始めて目の当たりにした。


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