バラとチョコレート(X'mas 仕立て)
「今ね、諭のアパートまで来たんだけど、合鍵忘れちゃって・・・」
「え?そっちにいるの?」
諭にしては珍しく驚いた声を上げた。
「ちょっと待っててもらえる?すぐ帰るから」
慌てた様子の諭はそう言ったまま電話を切った。
帰るに帰れなくなり、部屋の扉に寄りかかり、諭が帰って来るのを待った。
暫らくすると、バイク音がし、アパートの前にバイクが止まった。
「諭!」
バイクに跨ったままの諭に駆け寄ると、彼は私にメットを差し出した。
「よかった。カヲルさん家に向かうところだった。後ろに乗って、ちょっと連れて行きたい所があるんだ」
うんと頷き、メットをかぶると諭は自分のマフラーを外し、私の寒そうな首元にくるりと巻いた。
「合鍵忘れるって、ドジだなぁ、カヲルさんは」ふっと笑う諭に、恥ずかしくなり、私は何も言わずに諭の後ろに跨った。
「ちょっと飛ばすからしっかり捕まってて」
ウエストに手を回すと、諭はそれを合図にバイクを走らせた。