バラとチョコレート(X'mas 仕立て)


金色のリボンを添えたチョコレート色のボックスを膝に抱えて、諭の住む駅へと向かった。


人の流れとは反対方向にある駅に向かう電車に乗る人は少なかった。


向いの窓に映る自分を確認して、髪型を直した。


疲れた顔してるな、あぁもうちょっと女らしい格好をしてくればよかった。


朝はぎりぎりまで寝てて慌てて飛び起きたから、パーカーにジーンズにダッフルコートを羽織ったようなカジュアルすぎる格好だ。


しかもバッグはリュックだし・・・後悔しつつも、一旦、家に帰る時間がもったいない気がして、店を出るとそのまま駅に向かった。


諭の住む駅に着くと、携帯を取り出した。


時間を確認すると10時半を回っていた。


まだ仕事先かな?不安になりつつも電話を掛けてみた。


諭は電話に出なかった。


仕方なく諭のアパートに向かう。


駅から遠くないアパートに着くと、諭の部屋の合鍵を忘れて来たことに気付いた。


とんだうっかりさんだなぁと自分に呆れる。


ドアノブにケーキの入った袋を引っ掛けて、今日は帰ろうと思った時、コートのポケットに入れた携帯が鳴った。

 

「カヲルさん、今どこにいるの?」


諭からだった。


どうやら外にいるみたいだ。


行き交う車の音が電話越しに聞こえる。

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