バラとチョコレート(X'mas 仕立て)
アパートに帰って来ると、諭の部屋の扉の前に人影が見えた。
「金次(きんじ)・・・お前、何でここにいるの?」
諭が声を掛けると、扉に寄り掛かって地べたに座っていた少年がもぐもぐと口を動かしながら、「やっ、さとっぽ」と片手を挙げた。
そのもう片方の手に持っているのって・・・
「私のケーキ!それ、諭へのプレゼントだったのに」
思わず声を上げてしまった。
さっきドアノブに袋を提げたままだったことを今、思い出した。
「これってカヲっぽが作ったの?最高だよ!!ゴチです」
口の周りにチョコレートをべっとりつけながら少年が微笑む。
「お前・・・人の物を・・・拾い食いするなって姉さんに言われてないの?」
「そんなに怒らないでよ。まだ半分残ってるしさ~。それにママとケンカして家出して来たんだ俺。だから泊めてよ、さとっぽ!それともいたいけな子供を寒空の下、放り出すのかい?」
「本当、口だけは達者なんだから・・・」
ぶつぶつと文句を言いながら、鍵を開ける諭の間をすり抜けて少年は、「寒かったよ~」といの一番に部屋に上がっていった。
「ごめん、カヲルさんの前に現われたあの子は俺の姉さんの子、甥なんだ。全く、何でよりによって今来るんだ・・・」
2人きりのせっかくの夜がと肩を落とす諭に笑いかけた。
「いいじゃない。彼のおかげでダズンローズ作戦は大成功だったし」
きっといつか過去を振り返った時、今日の日が懐かしい笑い話になるよ。
だって、諭の隣にはずっと私がいるんだから。
諭はそれもそうだねと納得すると、「じゃあ、せっかくだからローソク立てようか?金次にほとんど食べられちゃったけど」ふっと優しく笑った。
暗い部屋に明かりが灯ると、街に広がるシャンパンゴールドに輝く宝石が1つ増えた。
(Fin★ I wish your merry Christmas! ★ )
