大事なものは、いつでもそばに
「おはよう」

門を開けようと柄に手をかけた時、久しぶりに聞く声が私の耳をかすめた。その声の方へ向くと、門扉越しにいつもと同じ笑顔を浮かべた愛佳がそこにいたのだ。

「…おはよう。あ、恭介?」

愛佳がそこに立っている理由が隣に住む恭介だと気付くと、私は思わず隣の家の門扉を見た。

「うん、それもあるけど、ちなみも待ってた。二人を、ね」

苦笑いしながら、彼女はそう答えたのだ。

「久しぶりだね、ちなみ。連絡しても、ちっとも返事くれないから…」

寂しそうな愛佳の声が、ナイフのように私の胸に突き刺さる。

「…ごめん。ちょっと、忙しかったから」

そんな彼女に対し、私は伏し目がちに、また言葉少なに返していた。

「びっくりしちゃった。北海道だってね」

「うん…」

会話は続かない。まるで言葉のキャッチボールにならなかった。

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