ティラミス





彼の演奏に聞き入っていると、突如として子供たちが公園にドタドタ入ってきた。



「知恵遅れ!!」


子供たちはそう叫んで彼にタックルをかまして、フルートを無理矢理奪い取った。

突然の出来事にその時私はポカンとしていたように思う。
知恵遅れ。
そうか、彼は、そうだったのか。

つい先ほどまで彼が奏でていたフルートの音色を思い出す。
純粋な音だった。
素敵な、響きだった。


私は無意識に子供たちの方に歩み寄り、彼らの手からフルートを取り上げていた。

突然の乱入者に子供たちは一瞬ハッとした顔をしたが、すぐに威嚇の表情を見せる。


「君たち、どこの学校?」

私のその言葉に子供たちは怯む。
そうして、罰が悪そうな顔をしながら走り去って行く。
ドタドタと、粗野な音をたてて。



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