雪降る月夜に
でも――――・・・。

ディナー後のデザートムースを食べる手を止めて、テーブルの向こうで珈琲カップに手を伸ばすアラン様をじっと見つめる。


―――きっと、許してくれないわよね・・・。


「ん―――?・・・エミリー、何か、相談事か?」


申してみよ・・と、ゆっくりカップを置いたアラン様の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめてきた。

組んだ両手をテーブルの上に乗せて、とても真剣にお話を聞いてくれようとしてる。

その真摯なブルーの瞳と合っただけで、途端に胸がドキドキして緊張してしまう。

全てを見透かすようなこの深いブルーの瞳には、未だにちっとも慣れることができない。

もう何度も何度も間近で見てるのに―――



「ぁ―――あの、行きたいところが・・あるのですけど・・・・・・」


「・・・シャクジの森ならば、駄目だ」

「・・え?」



まだ何も言ってないのに・・・どうしてアラン様は、わたしの行きたいところが分かるの・・・?

言葉が出ないまま、不思議に思って首を傾げて見つめていたら、アラン様は自席を立ってこちら側まで来た。



「・・・エミリー」

「――はい」


向き合うように身体を向けて見上げると、武骨な掌がそっと頬に当てられた。



「あそこは危険だと、何度も君に申しておる筈だぞ」


分かるな?と諭すように言うアラン様。


「でも―――」


反論しようとした唇が親指で止められて「駄目だと申しておる」と言うアラン様の体が目の前に沈み込んで、お顔がぐっと近づいた。


ちょっぴり怖い表情とは裏腹に、頬からするりと移動した指先が耳元の髪を優しく梳きはじめる。

たまに、耳を掠める指がとても心地好くて、おまけに間近に宥めるようなブルーの瞳があって、ますますドキドキしてしまう。


いつもなら、ここで素直に頷くけれど、今日は勇気を出して反抗してみる。

だって思い立ってしまったら、やっぱりどうしてもツリーが欲しいもの。



「あの・・でもアラン様?わたし、探したいものがあるんです。だから――――・・・あの・・どうしても、ダメですか?」


お願いしながら、強い想いを瞳に込めて見つめてみる。

と。

アラン様の凛々しい眉がぴくんと動いた。



「――――っ・・・。探し物、か。それは、私の分からぬ物か。あの森でないと駄目なのか?」

「もちろん、今日もお散歩しながら他のところを探してみたわ。けれど、ないの。どこにも―――」



綺麗な色のリボンとか、小さなベルは内緒でこっそり集めて準備したのに、肝心のツリーがなければ意味がないわ。
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