四十九日。



意を決し玄関のドアに近づく。
ゆっくりと体を動かし、ドアに体当たり。

「すり抜け…た」

無駄な幽霊という実感。

下を見ると俺の足より少し大きなローファー。

「ヤス…?」

親戚のいない家に来るなんて、ヤス以外考えられなくて。

仏壇のある部屋まで歩く。
床は歩く度にギシギシ音が鳴るはずだが、今の俺が歩いても鳴るわけもなく。
少し寂しさを覚える。

夕日の差し込む廊下が、とても虚しかった。
てか、そんなに時間経ってたんだ…。

部屋に近づくにつれ、話し声が聞こえてきた。

扉の前に立ち、深呼吸する。
スッと扉を抜ければ、そこには母さんとなつき、ヤスがいた。

母さんはキッと涙をこらえたまま。
なつきは泣き疲れたのか、座ったまま呆然としていて。
ヤスは、目が充血している。

俺ら親友だもんな。
ごめんな、たくさん恩返ししなきゃなかったのに、何も出来なくて。


親友で、大好きなヤス。
こんなに好きなのに…。
もう何もしてやれない。
告白はおろか、触れることすらできない。

二度と、話せない。

今頃になって、自分が死んでしまったという実感に襲われる。
「ヤス……っ……うぅっ…」

今さら、涙が溢れ出す。


仏壇の前を見れば俺の火葬は…済んでるようで。
なつきは俺を―

箱を、見つめてた。

限界が来たのか、やっと母さんが泣き出し、ヤスが後ろに回りなだめた。

強がってたんだよな。
ごめん母さん…。


俺はその場にいることに耐えられず、間近の壁から外に出た。

玄関先に座り込み、俺はずっと泣いていた。



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