ゆびきり

梨由の過去

いつもの最寄り駅、この駅にいつの間にかいた。



龍二に気づいたあの日、恋をした。



梨由は何気なく近くへいき、詩を見つめた。



「女子高生なんて珍しい。ゆっくりみていきなよ」



そんな言葉、みんなに言ってることくらい理解してる。



でも、彼に言われたら、私だけ特別だと思い込みたかった。


梨由は詩に目をむけた。他の自分の心を直にぶつけるのではなく、もっと深く、言葉を操る。そんな詩を書いていた。



「綺麗な言葉つかうんだね。みかけは恐そうなのに」


率直な梨由の素直な感想。



「失礼だな。欲しいのあったら買ってください」


業務的な態度に梨由はムッとした。



「ねぇ、名前なんていうの?」


言葉の使い方を知らないこのときの梨由には、敬語なんて使わなかった。


しかし、何も龍二はきにせずにあっけなく答えた。



「望月龍二」



「龍二…私、梨由。隣で私も詩書かせてください」



詩を書いたこともない、ただの女子高生が一目ぼれした男のそばにいたくて言った言葉。



誰がこのとき、梨由が大物になると思っただろう。


< 113 / 146 >

この作品をシェア

pagetop