ゆびきり
「お姉さん、そんなとこで見てないで近くでみてってよ」


呆然として自分をみていることに気付いた彼は、私にそういった。

私は言われるまま、彼の近くにいき、しゃがんだ。



〜ああ、なんてつまらない世界

ああ、なんて退屈な世界

あんたがいない世界は
ただの人ゴミ

こんな場所から早く追い出してくれ〜



私の目の中に一番初めにとびこんできた彼の詩だった。


梨由とは正反対の闇の詩を彼はかくんだと、衝撃を受けた。


「なんか気に入ったのあったら書いてあげるよ」


彼は、商売上手なのだろうか、自然に私に話しかけてくれている事が嬉しく感じた。


もちろん、客としてへの対応とわかっていても、


何故だろう?


特別仲良くしてくれているんじゃないかと錯覚を起こしてしまう。


「これ、これがきにいったわ」

私は自分の目に初めにとびこんできた詩を指さした。


「おっ、なかなかいいセンスしてるね〜それ、俺のデビュー作」


彼は嬉しそうにそう答えた。


少し恐そうにみえる整った顔も、笑うとなかなか可愛い顔になった。


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