猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

「大丈夫か?」

肩に置かれた手にビクッとして初花は我に返った。

「……はい」

見上げる初花の瞳から大粒の涙が溢れているのを見て、蓮は堪らず抱きしめようとしたが、反射的に避けられてしまう

「私は最低な人間です」

「何を言うんだ!」

涙を流しながら初花は真っ直ぐ蓮の瞳を見つめた。

「初花?」

伸びてきた腕を初花は首を振って拒んだ。

「さっき嘘をつきました」

「嘘?」

「はい。酔っ払って言った事は本心でした。あなたの家族になりたかった」

「なぜ過去形でいう?」

「犯人を見つけてくださりありがとうございます。
これで安心してマンションに帰れます」

「なに?!」

「ちょっと疲れてしまったので、先に休みますね」

「初花っ!」

「蓮さん、私は大くん…彼を…」

「彼が事故に遭ったのは初花のせいじゃない」

「わかってます」

事故は私のせいじゃない
でも私は…あの人のことを……

「今夜は一人にして下さい」

蓮はこのまま初花が離れていくとわかった。

何故だ?
俺と家族になりたいと言ったじゃないか
どうやったら思い出に勝てるんだよ!

「気持ちはわかるが……」

ダメだ、行くな!

「ごめんなさい…、いま私の中には蓮さん以外の人がいます。だから少し時間をください」

「わかった」

蓮は拳を強く握りしめた。

「連絡しますね」

いつか気持ちの整理がついたら……

「待ってる」

初花は立ち上がると瞳をぎゅっと閉じてから蓮を振り返った。

「ありがとうございました」

さようなら……





< 159 / 159 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
琉季菜/著

総文字数/173,529

恋愛(その他)222ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
両親を飛行機事故で亡くした 麻生兄妹の末っ子 美桜(みおう)は 亡き父の友人東堂の持つ趣味の店 《silver spoon》を経営している。 ある早朝、彼女の前に現れた 低めの甘い声が魅力的な 榊 絢士(さかきあやと)は 売り物でない絵に描かれた猫と 同じ猫の絵を持っていると言った。 サファイアブルーの猫の瞳が 二人の運命的な出会いを確実なものにする。 30年前に描かれた四枚の絵。 バラバラになっていたその絵が 引寄せた恋と愛の三部作。 【猫と宝石シリーズ】第一部! 2013.6.15~2013.10.30 2024.4 改訂  ******************* 作品中、大人な表現が出てきます。 苦手な方はご注意下さい。
regret
琉季菜/著

総文字数/26,283

恋愛(純愛)37ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
短編【アナタガスキ】のりょうくんこと、 曽根崎凌介(そねざきりょうすけ) のその後の話です。 凌を中心に、 りかとりょうの二人を取り巻く人達による オムニバス形式で『過去』と『現在』の話が 展開しています。 ―※attention※― ただ今こちらは限定公開中です。 2014.8.28~
誘惑のプロポーズ
琉季菜/著

総文字数/4,507

恋愛(オフィスラブ)6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彼の行動は誘惑の香りのお陰? それとも計画通り? ******************** L Cラブコスメ小説 参加作品 第5弾 テーマ **彼を誘惑するヒミツの香り** ******************** 2014.3.30

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop