甘い恋の始め方
「あ、時間ね」

理子はあずさに背を押されて部屋に向かう。

婚活パーティーは初めての経験。
29歳の女でも心臓はドキドキと暴れる。

個室には大きなテーブルがあり、人数分のテーブルセッティング。

まずはミシュラン3ツ星のイタリア料理を堪能し、リラックスしてから1対1で歓談させるのだと、この企画の担当者あずさが言っていた。

部屋に入ると、中にいる男女がさっと理子に視線を向けた。
理子は小さく頭を下げて、テーブルの上に置かれた自分のネームプレートを探す。

(あった)

理子の席は窓際の一番端。大きな窓から銀座の街並みが見下ろせる。

男性1人を除いて全員そろっているようだ。空いているのは男性側のドア側。

理子は対面に座る男性から順に視線を走らす。
隣の女性も理子と同じことをしているし、男性も女性たちひとりひとりに視線を動かしている。

(ま、値踏みするように見るのはもっともだよね)

こういう婚活パーティーでは自分の条件にあった人を即座に探せ出せてこそ、時間の無駄をせずに気になった人にアタックできるのだろう。
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