甘い恋の始め方
もっと冷静になってあの場に留まりきちんと話をすれば良かったと、後悔しても後の祭り。

ウダウダ、グダグダと布団に突っ伏して嘆く29歳の女。

悠也の顔を思い浮かべるたびに胸が痛くなる。

(この痛みはいつになればなくなるのだろうか……)

頭痛に加えて目もヒリヒリしてきた。手で肩を揉んでみるとカチカチにこっている。

(お風呂に入ろう……出てきたらきれいさっぱり気持ちの整理が出来ていると良いけど……)

それは今すぐには無理な話だ。翔の時より、今の方が打ちのめされているのだから。




お風呂から出て、いつものようにスウェットを着て髪にドライヤーをあてる。

(今日はヤケ酒飲んでやる! あっ! 冷蔵庫にチューハイあったっけ?)

髪を手でわしゃわしゃと乾かし、ドライヤーのスイッチを切ると真っ先に冷蔵庫の前でしゃがむ。

「やっぱりなかったか……」

開けた冷蔵庫に顔を突っ込むくらいに見てみるが、「酒」と名がつくのは料理酒だけ。

「髪の毛も乾いているし、コンビニまで行ってこようか……」

(酔っぱらって、そのまま眠ってしまいたい)

理子は長めのコートを羽織ると財布を持って、すっぴんのまま部屋を出た。

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