甘い恋の始め方
(愛はないけれど、好き……知り合ったばかりですぐに愛に発展するほど、彼は一目ぼれを信じる子供じゃない。好きだと言ってもらえるだけで幸せだと思わなければ)

「別れる気はないですし、結婚を申し込むつもりでした。いえ、今ここで申し込みます。俺と結婚してくれますか?」

悠也はスーツのポケットから四角い赤い箱を出した。

それから箱を開け、一粒のダイヤモンドの周りにサファイアがとりまいている指輪を取り出した。

理子の左手の薬指に高価な指輪をはめようとした。

その一連の流れに茫然となっていた理子だが、我に返り悠也の手を止める。

「本当に私でいいんですか? 悠也さんなら他にも――」

「君以外はいません。たしかに過去に付き合った女性は人並みにいますが、俺が結婚したいと思ったのは理子さん、貴方だけです。俺たちの身体の相性はいいし、結婚しても君だけです。金に困らない生活をさせてあげます」

「悠也さん……」

お金に困らない生活……それは婚活を始める時に一番に重点を置いた条件。たしかに結婚するうえで必要だと思うけれど、今の理子は無条件に悠也を愛していた。

話しをしているだけなのに、胸を高鳴らせてくれる人。

愛されてはいないけれど、居心地の良い関係が望める結婚。

(私は幸せになれる……)

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