甘い恋の始め方
「ありがとう」

「素敵なドレスだわ~ うっとりしちゃう。あ、理子も今日は特別にきれいよ」

あずさがうんうん頷きながら少し身体を引き理子を見る。

「はいはい。今日私がきれいなのはドレスのおかげです」

理子はにっこり笑ってふたりの冗談に付き合う。

「あら、わかってるじゃない。やっぱり年を自覚しきゃね」

憎めない加奈。

「すましていなきゃだめよ。花嫁さんは。お化粧が崩れるわ」

経験者のあずさは笑わないようにアドバイス。

「だって……」

理子は肩をすくめてから真顔にしてみせる。

「理子に先を越されちゃったわ。私の方が早く結婚が決まっていたのに」

そう言うのは加奈だ。彼女は同い年の彼とジューンブライドの予定。

早い時期に結婚式を挙げるのは康子の希望だった。

そんな康子だが、健康状態はよく先日の検査結果でもまだまだ現役で仕事が出来ると主治医に太鼓判を押された。

「幸せで病気の方が逃げていっちゃったのね」と康子は笑った。

「副社長の新郎姿、素敵だろうな~」

「それはもちろん」

加奈の言葉に理子は即答だ。


< 256 / 257 >

この作品をシェア

pagetop