甘い恋の始め方
「副社長、会議が始まってしまいます」

悠也と一緒にいた男性に理子は拍手喝采を送りたいくらいだ。

(そうよ。もっと強引に言って! 早くここから立ち去ってほしい)

「そうでした。では、あまり酷いようなら社のかかりつけの病院へ連れて行ってください」

悠也は連れの男性に頷いてから、加奈に告げて去って行った。

彼らが会議室に入るのを見届けた加奈は理子にもう大丈夫だと教える。

「ありがとう……」

立ち上がり屈んでいた腰を伸ばすように身体を動かした理子は大きく息をついた。

「もう心臓が止まりそうだったわ……」

「それはこっちのセリフよ。でも、副社長ってあんなに素敵だったのね~。初めて言葉を交わしてみて、胸がドキドキ高鳴っちゃったわ。初対面でエッチする気持ちもわかるわ~」

「それはいいからっ。加奈、早く行こう」

理子は加奈の腕を引っ張り、逃げるように退散する。

会議室から出てきたら今度こそばれてしまう。

(危ないところだった……)

ばれていたら彼はどんな反応をしていたのか……今は考えたくない理子だった。



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