甘い恋の始め方
「どこでも……あ、普通のデートがしたいです」

「普通のデートですか?」

悠也はかすかに首を傾ける。

「ドライブとか映画……水族館……」

「水族館、いいですね。ドライブがてら水族館へ行きましょうか」

今日も秋晴れ。

ドライブ日和になるだろう。

******

さすが高級車の中は広く、ゆったりと包み込むような座り心地。

車は神奈川方面に向かっている。

「どこに行くんですか?」

理子は水族館のある江の島に見当をつける。

「アクアラインを通り千葉の鴨川に向かってます」

「鴨川ですか、もう何年も行っていないです。楽しみです」

「以前は彼氏と?」

「え……」

「隠さなくていいですよ。29歳で恋愛経験がまったくないとは思いませんから」

(そうだよね……バージンじゃないってことだって知られちゃっているわけだし……)

「ご察しの通り、彼とです。でも、もう4年くらい前のような気がします」

翔とのデートは最初の頃、色々な場所に行った。だんだんとそれがなくなったが。


< 99 / 257 >

この作品をシェア

pagetop