ウェディング・チャイム
 
渡された茶色い瓶の蓋を開けていたら、甲賀先生が自分の瓶を掲げて言った。


「事故なく一日目が終了したことを祝して、乾杯!」

「乾杯!」


 瓶を軽く触れ合わせると、高く澄んだ可愛い音が鳴った。

 喉が渇いていたので、一気にそれを飲む。


「いい飲みっぷりだな。アルコールじゃないのが残念だけどさ」

「仕事の後の一杯が、まだまだ頑張れ、の栄養ドリンクっていうのも気合いが入っていいじゃないですか」

「お、ポジティブだな。もう一杯いっとくか?」

「ごちそう様です!」


 既に用意されていたそれをゆっくり飲みながら、さっきの恋バナにまつわるクラスの人間関係を話してみることに。

 甲賀先生はいつものように笑いながらも重要なポイントを私から聞き出し、感想とアドバイスをくれた。


「聞き役に徹しつつ、最後はちゃんと子ども達をなだめて部屋に戻せたんだから、良かったと思うぞ。ああいう時、普通はもっとぐだぐだ居座ったり、更に昔の話まで遡って悪口が続いたりしてさ。やっぱり小学生でも女って怖いよな~」


 大げさに溜息をつきながら、女の世界の恐ろしさを思い出しているような素振りに、ちょっと笑ってしまう。


「甲賀先生も高学年女子は苦手ですか?」


「俺だけじゃなく、男の教員はみんな女子の『グループ』が苦手だろうな。女ってどうしてみんな群れるんだ? 気の合わない奴と一緒にいるくらいなら、ひとりで本でも読んでた方が絶対にましだろ?」


 教室の中に居場所がなくて、ひとりぼっちでで本を読むことしかできない女子の気持ちを、きっと男子は理解できないのだろう。もちろん、甲賀先生も含めて。

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