ウェディング・チャイム

~幹事は酔ってられません~

~幹事は酔ってられません~


 大忙しの学習発表会が終わり、ほっとしている間もなく、私と甲賀先生、五年生の八木先生と渋谷先生の四人で余興の打ち合わせを開始。

 今夜行われる「学習発表会お疲れ様会」という名の打ち上げは、私達高学年が幹事に当たっている。

 ちなみに森が丘小学校では、低学年・中学年・特別支援・高学年・担任外・事務、という6つのグループに分かれていて、低学年から順に、歓迎会、運動会、一学期お疲れ様会、学習発表会、忘年会、送別会の幹事を持ち回りで行う。

 学期末は、普通学級の担任がそれはもうハンパない修羅場を乗り超えて、半ばゾンビのような状態で飲み会に参加するのがやっとという状態のため、この時期は普通学級以外の職務に当たる皆様が宴会を取り仕切ってくださる。

 私も、前回の一学期お疲れ様会の時は思いっきり寝不足の上、さんざん飲まされて泥酔したっけ。

 甲賀先生には吐いてるところまで見られちゃうし、思い出したくもない過去だったりする。

 それはともかく。


「一年生の余興の問題、何がいいですか?」

 八木先生の問いかけに、甲賀先生がすぐ答える。

「こんなのどうですか? 一年生の歌、合わせて何回手を叩きましたか?」

 ……なるほど。三曲歌った中で、手を叩いたのは二曲。合計すると……。

「いいですね。それ採用。ところで、正解は何回?」

「……藤田ちゃん、何回だ?」

「え? 私ですか? ……ええと、た~のし~い~ねっ パパパン……」

 結局私がフルコーラス歌って、みんなが数えてくれて正解を出したのはいいけれど、これはなかなか恥ずかしい作業だ。


「では次。二年生の問題は何がいいですか?」


 ……実はこれ、休憩時間にお茶を飲みながら、こっそり八木先生のクラスで話し合っている。

 しーんとした三階に響く私の歌声と先生方の手拍子。

 学習発表会の振り返りは大事だけれど、まさか素面(しらふ)で歌う羽目になろうとは。

 常に下っ端は全力投球。もちろん、幹事も全力でやらせていただきますとも。

 疲れてる、なんて言ってる場合ではないのです!


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