恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
◇王子よりも、誰よりも



そのまま和泉くんと少し話してからカフェで別れた。

和泉くんは新しく借りた部屋に必要な生活用品を買うからと駅ビルの方に向かって歩いていき。
私は和泉くんの背中を見送ってから、反対方向に、家までの道をゆっくりと歩き始めた。

傘が必要になるかもしれないって言われたけど、天気予報が外れたのか雨は降りだしそうもなく、厚い雲の上からはいつの間にか太陽すら覗いていた。

そういえば、和泉くんは晴れ男だったっけ。
本当かどうかは分からないけれど、そのおかげか、高校一年生の体育大会も球技大会も、マラソン大会、そして文化祭もきれいに晴れた空の下で行う事ができた。

今のこの天気も、和泉くんのおかげなのかもしれないなと思い、ふと笑みがこぼれた。

今まで一緒にいたからか、ひとりになって考えるのは……頭に浮かぶのは。
和泉くんへの想いや、和泉くんとの思い出ばかりだった。

体育祭の時、借り物競争に出た和泉くんに担がれた事があったなーとか。
仲のいい女子って指令札に書かれた指令に従って私を担いだ和泉くんに、他の女子たちの視線が集まって痛かったのも今となってはいい思い出だ。


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