恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「元カレ。残ってる荷物、廊下に出しておくから取りに来いって」
「本当にどうしょうもないクズ男と付き合ってたんだな」
「……そうだね」
自分に呆れるように笑いながらそう返すと、和泉くんが顔をしかめる。
「まさか、まだ好きなのか?」
「え、あ……ううん。別れ話自体は一ヶ月前に終わってるし、もう未練だとかそういうのはないよ。
ただ、そんな扱いされちゃうんだなって、今までの関係ってなんだったんだろうって思っただけ。
見返り求めて付き合ってたわけじゃないのに勝手だよね」
笑いながら言ってカップに入ったコーヒーを眺める。
元カレを怒らせないように、困らせないように、迷惑をかけないように。
そんな風に思って行動してきたのは私の勝手であって、元カレが望んだ事じゃない。
言いなりになっていたのは私の意思だ。
私が言う事をきく事がふたりの間では当たり前になっていったのだって、私がそうしたから。
だから、今日、急に怒りをぶつけて反発した私に元カレがカっとなるのもおかしくはない。
怒鳴ったり手を出すのはどうかと思うけど、色々考えてみると、彼のそういう部分を私が助長してしまった気もするし。