恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「また自己犠牲の話か」

私の話を黙って聞いていた和泉くんが、呆れるようにそう言った後、こちらを見る。

「その辺の女はもっと自分勝手に男を扱ってるのに、おまえは相手主体で考えすぎだ。
健気だとかいう言葉で片づけるにしても度が過ぎてる」
「……そうかなぁ」
「絶対そうだろ。会って数時間の俺が思うんだから余程だ。
悲劇のヒロインになって自分に酔うのが好きだとか、ドМだとか、理由があるなら話も別だけど」
「そんな趣味ないよ。できるならいつも平和でいたいし、幸せにもなりたい。
……なかなかそうなれないけど」
「じゃあ何がおまえをそうさせてるんだよ。ボランティア精神?
おまえ見てると、アレ思い出す。童話のシンデレラ」
「シンデレラ?」
「母親とかにいじめられてもはいはい従うだけで何も言い返さないし、行動に移さないしイライラする」
「でも、従って住まわせてもらわないと生きていけなかったから、仕方なかったんじゃない?」
「だとしても、王子が惚れ込むくらいの外見があったわけだろ。
だったらそれ使ってもっと上手く生きればよかっただけの話だし」



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