恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


面倒そうに顔をしかめた和泉くんの言葉を遮って言った私を、しかめられ細められたままの瞳が見る。
その瞳を見つめ返しながらゆっくりと口を開いた。

「高校の時、私、和泉くんが優しいから勘違いして手紙渡そうとしちゃって……ごめんね。
ずっとあの時の和泉くんの困った顔が頭から離れなくて、謝りたいと思ってたの」

話している間に、和泉くんの顔は真顔に戻っていた。
こうしてじっと見ると、あの時とはどこが変わったかがよく分かる。

あの時の和泉くんとは違うって、分かる。

「謝ろうと思ってたのに、もたもたしてるうちに和泉くん留学しちゃったからずっと言えないままで……」
「もしかして、それからトラウマになったのか?」

今度は私の言葉を和泉くんの声が遮った。
トラウマ?と聞き返した私に、和泉くんが言う。

「困られるのが嫌なんだろ」
「そうだけど……違うよ。和泉くんが原因じゃない。
昨日も話した通り、きっと家族の事とか元からの性格だとか、そういう事が原因だから」

誤解されたくなくて慌てて否定する。
それから、声のトーンを元に戻した。


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