人知れず、夜泣き。
 
 「・・・犯人、まだ捕まってないんだって」

 オレの胸の中で桜が小さく震えていた。

 よっぽど怖かったのだろう。

 「大丈夫。 桜はオレが守るから。 大丈夫だから」

 桜を抱きしめながら、桜の背中を擦る。

 「うん。 ワタシは大丈夫。 病院にいるから、もう襲われない。 だから、佐藤さんを守って」

 桜が、その痛々しい腕でオレの胸を押して身体を離した。

 「・・・なんで佐藤さん??」

 なんで佐藤が出てくんの??

 今、佐藤は関係ないじゃん。

 「・・・昨日、見た。 2人で腕組んで歩いてるとこ」

 俯きながら鼻を啜る、今にも泣きそうな桜。
< 133 / 161 >

この作品をシェア

pagetop