『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
「あのさ、爆笑エスカレーターなんだけど」
『うん、明日出るって言ってたね』
「どんな感じかな、プロデューサーとか、ディレクターとかは」
『結構厳しいらしいよ、あれは、今、注目されてるからね。新人の登竜門として』


うっ、気が重い。


厳しい空気には弱いんだよ、まーちゃ子は。


この間もそう、大事な関西ローカル番組のアシスタントを決めるオーディションで、ガチガチに緊張して落選したし。


今回もそうならなきゃいいけど、多分、そうなるんだろうな。


本当に面白い子だけど、実力が上手に発揮出来てない。


まあ、TVで放送出来ないネタが得意なだけで。


『志穂? 』
「ごめん、考えてた」
『まーちゃ子ちゃんなら大丈夫だよ、面白いからさ』
「放送出来ないネタはね、あ、もうこんな時間だ」


時計を見ると11時。


明日の朝早くからロケがある敬介も、そろそろ寝なくちゃいけないのに。


『じゃあ、お休み。愛してるよ、志穂』
「うん、愛してるー」


電話越しの愛、さみしいけれど遠距離なんだから仕方ない。


あたしはいつ東京に帰れるんだろうか、来年か再来年か?


いや、ここでまーちゃ子に東京進出の足がかりを作らせて、そこで戻るという方法もあるのだから。


とにかく寝よう、明日は朝からアポ取り電話だ。


まーちゃ子のために、何としても頑張らなきゃ。






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