『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
深夜バスに乗って向かった東京、久しぶりの景色に胸をおどらせたけれど……。


案の定、まーちゃ子は緊張でガチガチ、その上スベった。


セレクトしたネタは、大阪日本橋アイドル。東京で言う秋葉原アイドルみたいなもの。


「みんなー元気してはるニャンかー? 」


ネコ耳を付け、メイド衣装のまーちゃ子が、マイクを片手に首をかしげる。


「そーニャンかー、ウチはー、元気無いねーん。昨日な、オカンにバレてもーてー、家を追い出されてなー、今日からネカフェ難民やし。ニートからネカフェ難民て、日本の若者の代表みたいやなー。え? 頑張れ? めっちゃうれしいわー。ほな、一曲歌いまーす。曲はー『雨の心斎橋』」


やばい、ウケてない。


そう分かった瞬間から声はうわずり、ネタは間違える。


『笑い』ではなく『失笑』を取り、大失敗。


担当マネージャーとして、身の置き所も無いけれど、本人はもっと辛いだろう。


「まーちゃ子、大丈夫、次は頑張ろう」
「大沢さん、もうウチ、あきまへんて」
「そんな事ないよ、ね」


かわいそうで、責める気なんか起こらない。


でもね、ネタ帳を忘れたのはどうかと思う。


「今度こそ、忘れ物はしないようにね」
「はい、すんまへん」


このしおらしい顔、やっぱりこの子のマネージャーになれて良かった。


大阪に着いたら、残念会をしよう。


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