彼女の世界が変わらぬ理由
沈黙の色
--
-----




放課後の美術室。

開かれていた窓から、青葉の香りがする風が、強く吹き込んできた。

長い黒髪が乱され、柚木マリア(ゆずきまりあ)は目を閉じ、髪を押さえる。

目を開いた時、すぐそばに人が立っていて、窓を閉めてくれた。

臨時講師の飛田宗一郎(ひだそういちろう)。

少しクセのある豊かな長い髪を一つにまとめ、無精ひげを生やす男。

ライトグレーのスーツを着た彼は、二十七歳らしいが、もう少し上にも見える。

彼はニコリとマリアに微笑み、手を叩いた。


「手は休めなくていいから、そのままで聞いてほしい」


耳に心地よい低い声に、十五名いる美術部員が全員、彼を見た。


< 1 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop