彼女の世界が変わらぬ理由
安東は考えるそぶりも見せず、頷いた。
「うん、思う」
マリアは驚いた。
美術部でも何でもない、素人の安東にも伝わるくらい変化していたのか。
「去年からちょっとずつでしょ?」
「…らしいね」
「らしい? …ひょっとしてマリアちゃん、賞とりたくなかったの?」
「え?」
「心配してたんだァ。マリアちゃんの絵が、悲しそうだから」
遠慮がちな声に、マリアはさらに驚いた。
そんなにはっきりと現れていたのだろうか。
マリアの絵は、地塗りせず、木炭で素描きもせず、エボージュ(下描き)から入る。
混色はなるべくせず、重ね塗りで繊細な色を表現し。
乾いては塗り、乾いては塗りを根気良く繰り返し。
完成体は光を通し明るく輝く、透明感のある爽やかな絵となる。
それを悲しそうと安東に評されるとは。