彼女の世界が変わらぬ理由
それを言うと、安東は目に見えて落胆した。
「……そんなァ。あたし、マリアちゃんの絵、好きなのに~!」
「そんなことを言うのは、安東さんぐらいよ」
「だってマリアちゃんの絵、キュンってなるもん!」
「キュン?」
「そうだよ! キュンキュンてなって、何だかこう、体の中心が引っ張られるの!」
たとえが非常に抽象的だ。
しかし安東の一生懸命な気持ちは伝わってくる。
「ありがとう。…でも、もう描かないの。絵もすべて処分するわ」
「処分!? 捨てちゃうのっ? だめだめ! それならあたしが全部もらう!」
安東はまだ描きかけの絵を、背中にかばうようにして立つ。
マリアは首を横に振った。
「ダメ。絵は全部処分する」
未練は一枚たりとも残せない。
そうでないと、一生前に進めなくなる気がした。