彼女の世界が変わらぬ理由
頑ななマリアに、とうとう安東は大きな瞳に涙をにじませた。
教室の後ろの棚に駆け寄り、そこからキャンバスを次々と出してイーゼルを立てて並べた。
「これも、これも、これも、これも! 全部捨てちゃうっていうの!?」
マリアは長いまつげを震わせ、目を伏せた。
並べられた絵は、すべて同じマリアの絵。
青空の下。
雪の中に立つ桜の木が、柔らかなタッチで描かれている。
下の隅に、『╂』とサイン。
このサインを見た時、安東は興奮したように言っていた。
「素敵! これ、クロスでしょ? ピッタリなサインだね!」
思えば彼女は、マリアの絵をはじめからずっと、ベタ誉めしていた。
それは隅から隅まで。
そんな安東には、処分するなどと言うべきではなかったのかもしれない。